二つの指揮スタイル
AUFTRAGSTAKTIK
任務戦術
目標(何を達成するか)だけを命じる。手段(どうやって)は現場が判断する。
→ 現場の状況に応じて柔軟に対応可能
BEFEHLSTAKTIK
命令戦術
詳細な手順まで命じる。何時にどこへ行き、何をするか全て指定。
→ 状況が変わると対応できない
なぜ任務戦術が必要か
戦場は混沌としている。計画通りに進むことはない。
—— ヘルムート・フォン・モルトケ
詳細な命令を出しても、現場では状況が変わっている。橋が落ちていた。敵が予想と違う場所にいた。味方が遅れている。
命令に従おうとすれば、不可能な行動を強いられる。命令を無視すれば、統制が乱れる。どちらも負ける。
だから目標だけを示す。手段は現場が最適なものを選ぶ。
具体例
DETAILED ORDER
「第1中隊は05:00にA地点を出発し、B道路を通ってC地点へ前進。07:00にC地点に到着し、D方向へ攻撃を開始せよ」
→ B道路が敵に封鎖されていたら? 07:00に間に合わなかったら?
MISSION ORDER
「第1中隊の任務は07:00までにC地点を確保すること。ルートは任意」
→ 状況に応じて最適なルートを選べる。目標は明確なので、判断に迷わない。
前提条件
任務戦術は万能ではない。機能するための前提条件がある。
1. 上官と部下の信頼関係
上官は部下の判断を信頼する。部下は上官の意図を理解する。この信頼がなければ任務戦術は機能しない。
2. 部下の能力
現場で判断できる能力が必要。訓練されていない部隊に任せても失敗する。ドイツ軍は下士官教育に力を入れていた。
3. 上官の意図の共有
何を達成したいのか、なぜそれが重要なのかを部下が理解していなければ、正しい判断はできない。
THE PRINCIPLE
目標を共有していれば、詳細な指示がなくても正しい判断ができる。
目標が共有されていなければ、詳細な指示があっても失敗する。
グデーリアンと任務戦術
グデーリアンは任務戦術を徹底した。部下に目標を示し、手段は任せた。
逆に、上官からの詳細な命令には反発した。「待て」と言われても、現場で勝機を見れば前進した。
これが上層部との軋轢を生んだ。だが電撃戦の成功は、この任務戦術なしにはあり得なかった。
現代への教訓
OKRとの類似
Objectives and Key Results。目標(O)を設定し、成果指標(KR)を定める。How(どうやって)は各自が判断。任務戦術そのもの。
マイクロマネジメントの害
全てを指示するマイクロマネジメントは、現場の判断力を殺す。状況変化に対応できなくなる。
採用と教育の重要性
任務戦術が機能するには、判断できる人材が必要。採用と教育に投資せよ。
電撃戦最強。グデーリアン最強。
目標を共有せよ。前進あるのみ。