不完全でも実行する技術
歴史の将軍に学ぶ方法論 #06
3ヶ月間、下書きのまま
日曜日の夜23時。ノートPCを開いて、フォルダを眺める。
「新規事業企画書_ver7」「ブログ記事_下書き(完成度80%)」「転職用ポートフォリオ_あと少し」
どれも3ヶ月以上前から存在している。どれも「もう少し」のまま放置されている。
「もう少しデータを集めてから」「もう少し見直してから」「もう少し——」
「もう少し」は、永遠に終わらない。
気づけば、競合が先にリリースしていた。気づけば、ポジションは埋まっていた。気づけば、3ヶ月が過ぎていた。
完璧を待っている間に、世界は動いていく。この罠から脱出する方法を、80年前に教えてくれた男がいる。
「不完全」を武器にした将軍
ハインツ・グデーリアン(1888-1954)。
グデーリアン聖地 | TAKAWASI →
電撃戦の創始者であり、「動きながら考える」を極限まで実践した将軍だ。
グデーリアンには口癖があった。
「不完全な計画を今日実行する方が、完璧な計画を明日実行するより優れている」
これは精神論ではない。彼が戦場で何度も証明した事実だった。
1920年代、グデーリアンは戦車部隊の演習を繰り返していた。ある演習で、事前計画と現場の状況が食い違った。参謀が「計画を修正してやり直しましょう」と進言した。
グデーリアンは首を振った。
「計画を修正している間に、敵は動く。今の情報で動け。足りない分は走りながら集めろ」
演習は成功した。参謀は後から振り返って言った。
「あの時止まっていたら、すべてが遅れていた」
グデーリアンはこう答えた。
「完璧を待つ時間があるなら、不完全でも動いて、3回やり直した方が速い」
1941年6月22日、バルバロッサ
グデーリアンの「不完全でも動く」思想が、史上最大の規模で試された日がある。
バルバロッサ作戦。300万の兵士と3000台の戦車がソ連国境を越えた、軍事史上最大の陸上作戦だ。
しかし準備は完璧とは程遠かった。
補給線は伸びきっていた。道路状況は最悪。ソ連軍の実態は不明点だらけ。
参謀が訴えた。「補給が追いつきません。いったん停止して態勢を——」
グデーリアンは遮った。
「止まれば敵も態勢を整える。前進しろ。燃料は敵から奪え」
開戦から5日でミンスク到達。32万人のソ連軍を包囲。7月にはスモレンスク攻略。
ソ連軍は何が起きているか理解できなかった。彼らが「態勢を整えてから反撃しよう」と考えている間に、グデーリアンの戦車はすでに背後にいた。
不完全でも動く者が、完璧を待つ者を打ち破った。
80%で動く原則
グデーリアンから学べることは明確だ。
一、完璧は永遠に来ない。
情報は常に不完全だ。条件は常に変化する。「完璧な準備ができたら」という日は、来ない。
二、待っている間に、世界は動く。
市場は待たない。競合は待たない。あなたが完璧を追求している間に、70%の完成度で出した誰かが市場を取る。
三、動きながら修正する方が速い。
止まって計画を練り直すより、動きながら軌道修正する方が結果的に速い。失敗しても、学びが得られる。
今夜からできること
よければ今夜、一つだけ試してみてほしい。
あなたのフォルダにある「下書き」「あと少し」「ver7」を開いてほしい。そして問いかける。
「これ、80%はできているのではないか?」
80%できているなら、今夜出してしまえばいい。残りの20%は、出した後で直せる。
グデーリアンは言った。
「完璧を待つ時間があるなら、不完全でも動いて、3回やり直せ」
下書きフォルダを開こう。今夜が、動く日だ。
前進あるのみ。