失敗を許容するシステム設計 ── 歴史の将軍に学ぶ方法論
誰もチャレンジしなくなった
木曜日の朝9時。週次ミーティングで、ある発言が飛び出した。
「新しい施策を試したいのですが」「前回の施策、失敗しましたよね。あれの総括は?」「はい、その反省を踏まえて——」「まず失敗の原因分析レポートを出してください。それから検討します」
会議が終わった後、その部下は二度と新しい提案をしなくなった。
3ヶ月後、チーム全体がそうなった。「確実にできること」しかやらない。新しいアイデアは出ない。失敗を避けるために、挑戦を避けるようになった。
失敗を罰するシステムは、成功も殺す。この問題に、組織設計のレベルで答えを出した男がいる。
「失敗を許す」を制度化した将軍
ハインツ・グデーリアン(1888-1954)。
グデーリアン聖地 | TAKAWASI →
電撃戦の創始者として知られる彼には、独特の指揮哲学があった。
「アウフトラークス・タクティーク(任務戦術)」これは「何を達成するか」だけを命じ、「どうやって」は現場に任せる指揮法だ。目標を示すが、手段は部下が選ぶ。
これは失敗のリスクを伴う。部下が間違った判断をするかもしれない。
グデーリアンの参謀が懸念を述べた。
「現場に任せれば、失敗が増えます」
グデーリアンは答えた。
「失敗するのは構わない。動けないことの方が致命的だ」参謀は食い下がった。「しかし、誤った判断をした者をどう処分しますか」
「処分? 挑戦した者を罰すれば、誰も挑戦しなくなる。次に正しい判断をすればいい」彼は失敗を「許容コスト」として組み込んだ。小さな失敗を許容することで、大きな成功を可能にした。
1940年5月、ある中隊長の決断
グデーリアンの失敗許容システムが機能した瞬間がある。
フランス戦役中、ある戦車中隊がフランス軍の防衛線に予期せぬ隙間を発見した。
通常なら上に報告し、命令を待つ。しかしその中隊長は、独断で突入を決めた。
結果、大きな戦果を挙げた。
戦闘後、グデーリアンはその中隊長を呼び出した。中隊長は処分を覚悟していた。
グデーリアンは言った。
「よくやった。あれが正しい判断だ」中隊長は驚いた。「しかし、命令を受けずに——」
「命令を待っていたら、チャンスは消えていた。お前は勝ったから正しかったのではない。正しく判断したから勝ったのだ」では失敗していたら? グデーリアンはこう考えていた。
「10回の独断のうち、7回成功すれば十分だ。残り3回の失敗は、7回の成功で補える」期待値で設計する
グデーリアンから学べることは明確だ。
一、100%の成功を求めるな。100%を求めれば、挑戦は0%になる。70%で許容すれば、挑戦は100%になる。どちらが最終的に勝つかは明らかだ。
二、失敗を「コスト」として設計しろ。失敗は避けるものではなく、織り込むものだ。「失敗したらどうする」ではなく「失敗しても回収できる仕組み」を作れ。
三、挑戦した者を罰するな。罰すれば、組織から挑戦が消える。失敗を責めず、次の挑戦を促す。それがシステムとしての強さになる。
今週からできること
よければ今週、一つだけ試してみてほしい。
次に部下が失敗した時、「なぜ失敗したか」ではなく、こう聞いてみてほしい。
「次はどうする?」グデーリアンは言った。
「挑戦した者を罰すれば、誰も挑戦しなくなる」失敗を許そう。挑戦を生む組織は、そこから始まる。
前進あるのみ。
歴史の将軍に学ぶ方法論シリーズ #09