一点突破で結果を出す技術 ── 歴史の将軍に学ぶ方法論
5つのプロジェクト、全部中途半端
金曜日の夜22時。PCを閉じながら、今週を振り返る。
新規事業の企画書、途中まで書いた。既存顧客へのフォロー、3件だけ電話した。チームの評価資料、半分だけ埋めた。自己研鑽のオンライン講座、15分だけ見た。副業のブログ、1記事だけ書きかけた。
どれも「やった」。どれも「終わってない」。1週間で5つのことを少しずつ進めた結果、成果は1つもない。忙しかったはずなのに、何も終わっていない。
この状態を、80年前に「致命的な敗因」として分析し尽くした男がいる。
分散を憎んだ将軍
ハインツ・グデーリアン(1888-1954)。
グデーリアン聖地 | TAKAWASI →
電撃戦の創始者であり、「集中」の権化と呼ばれた将軍だ。
グデーリアンには、忘れられない光景があった。
1918年、第一次世界大戦末期。ドイツ軍は戦車を初めて実戦投入した。しかし結果は惨敗。なぜか? 戦車を歩兵師団に「少しずつ」配備したからだ。
10個師団に10台ずつ。どの師団も「戦車がある」。しかしどの師団も「戦車で勝てない」。
グデーリアンはこの失敗を徹底的に研究した。そして一つの結論に達した。
「分散は敗北の父だ。勝つためには、全てを一点に叩きつけろ」彼は上層部にこう主張した。
「100台の戦車を10個師団に配れば、どこでも負けます。100台を1点に集中すれば、そこで必ず勝てる。そしてその1点の突破が、全体を崩壊させるのです」
上層部は反論した。「それでは他の戦線が手薄になる」
グデーリアンは言い返した。
「全てを守ろうとする者は、全てを失います」1940年5月10日、アルデンヌ
グデーリアンの「一点突破」が歴史を変えた瞬間がある。
フランス侵攻作戦。連合軍は強大だった。兵力でも戦車数でも、ドイツを上回っていた。
しかしドイツには「シックルシュニット(鎌の一撃)」計画があった。
アルデンヌの森——「戦車は通れない」と誰もが思った山岳地帯に、装甲部隊を集中投入する。1940年5月10日午前5時30分。グデーリアン率いる第19装甲軍団がアルデンヌに突入した。約800台の戦車が、狭い山道に列をなして進む。
連合軍司令部はベルギー北部に主力を配置していた。「ドイツは第一次大戦と同じルートで来る」と信じていたからだ。彼らは戦力を「万遍なく」配備していた。
結果は圧倒的だった。
5月13日、ムーズ川渡河。5月20日、英仏海峡到達。
わずか10日で、ヨーロッパ最強の陸軍国家が崩壊した。フランスは「全てを守ろうとした」。グデーリアンは「1点を突破した」。
同じ戦力でも、集中の仕方で勝敗は決まる。
一点突破の実践
グデーリアンから学べる原則は明確だ。
一、選択とは「捨てること」。全部やろうとするな。5つのプロジェクトを同時進行するなら、4つを止めて1つに全力を注げ。
二、「1点で勝てば全体が動く」。グデーリアンはムーズ川の1点を突破しただけで、フランス全体を崩壊させた。あなたにも「ここを突破すれば全体が動く」ポイントがあるはずだ。
三、分散は「安心」であって「成果」ではない。全部に手をつけていれば「何かやっている感」は出る。しかし結果は出ない。
今夜からできること
よければ今夜、一つだけ試してみてほしい。
いま抱えているプロジェクトを全部書き出す。そして問いかける。
「この中で、1つだけに全力を注げるとしたら、どれか?」残りは、完了するまで止める。
グデーリアンは言った。
「全てを守ろうとする者は、全てを失う」その逆もまた真だ。1点に集中する者は、全てを手に入れる。
前進あるのみ。
歴史の将軍に学ぶ方法論シリーズ #03